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経済政策学科

【経営フィールドワーク】長崎名物「いりこ」の現場/中小企業論[No.01]

  • 2024.03.24
  • 経済政策学科

 突然ですが、みなさんは普段の食事に「いりこ」を使いますか? たとえば、カタクチイワシの「いりこ」で出汁 (だし) をとったことはあるでしょうか。「いりこ」をそのままバリバリと食べたことは?

 そんなの、あるに決まってるでしょ。こう思った人は西日本にお住まいの人かもしれません。あるいは、何かの縁で西日本の食文化に触れてきた人でしょうか。というのも「いりこ」という言葉は主に西日本で使われるからです。そして、それを日常的に家庭料理で使うのも西日本の文化だと言われています。

 こうした言葉や食事の話を聞くと、それって文化の話でしょう。地域柄、昔からの風習が残っているんですね。などと言われそうです。しかし、そうした文化はとくだん何の努力もなく続くものでしょうか? 食べ物は、ただ食べる人がいるというだけで漫然と (まんぜんと) 引き継がれるものでしょうか?

 このたび「中小企業論」の授業では、このような文化を支え、広める原動力を探し求めて中小企業のビジネス実践を学びました。それが、今回学生たちが参加した経営フィールドワークです。

 

 

 はじめに、「いりこ」とは何なのでしょうか。これは一般に「煮干し」 (にぼし) を指して使われる言葉です。暑いお湯で「煮て」、「干して」乾燥させたものが「煮干し」。これを西日本では「いりこ」と呼ぶのですね 1) 

 今回、授業に協力くださったのは「いりこ」のパック商品などを広く手がける「長崎海産株式会社」さんです。大学とのご縁も深く、近隣の土地で事業を営んでいることから特別に事務所と工場を訪問させていただきました。

 長崎海産社は、創業から数えると90年以上の長い歴史をもつ県央地域の優良企業です。今から90年ほど昔、1932年に創業されました。その後、時代の流れに沿う形でたびたび会社の体制や主力事業を変えてきました。現在は主として「いりこ」等の乾物 (かんぶつ) を仕入れて、パック化された製品をつくっています 2) 

 この記事では、まず「いりこ」が同社に届くまでのプロセスを紹介します。これは同社の外に出ないと見れない部分。そこで、授業に先だって教員が見学をおこないました。

 最初に訪ねたのは「いりこ」の加工現場。水揚げされたばかりの新鮮なカタクチイワシが、次々と新鮮な湯の中に浸されます。それが今度は乾燥室の「せいろ」に並べられ、煮干しになります。

 乾燥の時間は魚の種類や大きさによって異なります。この日は一般的な大きさのカタクチイワシを見せてもらいました。おおよそ24時間で煮干しとなるそうです。

 長崎県にはこのような加工場がたくさんあります。これを担う地元企業に支えられて煮干しの生産量「日本一」が維持されているのですね。

いりこの製造工程

 

できあがった直後の煮干し

 

 続いて見学したのは仕入れの現場。長崎市内で開かれる長崎漁連 (ながさきけんれん) の入札場 (にゅうさつじょう) です。ここには県内全域から煮干しが集まります。北は小佐々、南は島原からの製品がズラリ。週に2回、このような場が開催されるそうです。

 長崎海産社はここで「いりこ」を仕入れます。担当の社員さんたちが煮干しの状態を観察し、品質を見極めていきます。他の会社も同様で、この日はほかにも10社以上の仕入れの担当者が来ていました

 各社が希望の購入金額(入札額)を決めて申告する仕組み。それをもとに落札者が決まります。生鮮モノの魚市場でよく見る「競り」 (せり) ではありません。値段の付け方ひとつで仕入れの成否が分かれるため、いずれの会社も入念に入札額を決めていました。

 このように、良いものを確実に調達することが大切です。担当者はお客様の要望に沿って仕入れの戦略を立てるそうです。長崎名物の「いりこ」づくりは、こうしたバトンリレーによって担われているのですね。

 

刻々と迫る入札の締切

 

 長崎県では、カタクチイワシのほかにも様々な魚種が煮干しとなっています。みなさんは、どれが何という魚であるか分かりますか? 以下の写真を見て考えてみましょう。県内のスーパーに行けば色々なパック商品が並んでいます。そこで答え合わせをしてみるのも面白いでしょう。

 これらの煮干しが次々と長崎海産社に運ばれます。学生たちが見学したのは、これを順にパック化していく工場と、同社の事務所でした。後半の記事ではその様子を取り上げます。魚の答え合わせも、そちらでご覧ください。

 

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