2023年5月、初めて開催された鎮西学院大学の「にじフェス」。
そこには「多様性 ~繋ぐ~」というビジョンがありました(前半の記事)。
それは、どういった経緯で始められたのか。今後、どのように継承されるのか。
山口詩織さん(経済政策学科4年生)と永田恭平さん(同3年生)に語ってもらいました。
――山口さんと永田さんは、以前から「にじフェス」をやろうと思っていたのですか。
山口 もともと、この大学には「メイフェスタ」というイベントがありました。「メイ」という名前の通り、5月に開催されていました。ちょうど4月に入学した一年生たちがオリエンテーションなどを終えた時期ですね。留学生のお祭りのようなイベントで、新入生と上級生の交流もできたそうです。
永田 前々から「またメイフェスタを開催しよう」という声は上がっていましたね。山口さんはなぜそう思ったのですか? メイフェスタを見たことはあるんでしょうか?
山口 私も、じつは自分の目で見たことはありません。私が入学した年よりも前にやったのが最後だったと聞いています。私が入学したのは(2020年)コロナ禍が始まった直後でした。それで、なにも行事がなかったんです。かつてはメイフェスタという行事があったことを知ったときは、ぜひみっつの学科で一緒にこれをやれたらと思ったんです。
永田 山口さんもそれを見たことはなかったんですね! 僕も入学した年は(2021年)、11月の「$2祭」(2ドルさい) を見れなかったんです。コロナ禍の再拡大で、ホールでの音楽祭に切り替わったので。2年になって初めて(2022年)開催できた時は、最高でした。それで「にじフェス」の企画も楽しみにしていました。
――お二人は、どういったきっかけで今回の行事に関わったのでしょうか。
山口 私は入学以来、ずっと「なにかをやりとげたい」という気持ちを持っています。社会福祉学科に入学したのち、2年の後期からは経済政策学科に移りましたが、こちらにも社会福祉の要素があると気づきました。そこから、前半で話した「多様性 ~繋ぐ~」というテーマに辿りつきました。それを形にしたかった。
永田 僕は一年生の時から学生会に入っているため(山口さんのひとつ下の代)、おのずと「にじフェス」に関わることになりました。昨年の「$2祭」がとても楽しかったから、「にじフェス」も楽しいイベントにしたいと思ったんです。じつは、「にじ」という言葉に込められた理念については全然考えていませんでした。
山口 それは、私がこれをうまくみんなに伝えられなかったからだと思います。自分でもメインテーマ(多様性 ~繋ぐ~)の考え方を突き詰めていなかった。いま考えてみると、コンセプトを整理できないまま、薄っぺらい説明をしていたかもしれません。そのため、どんな行事にすればいいのか、どんな企画をするといいのか、ということを詰め切れなかった。これが反省点です。
永田 たしかに、そういう〝思い〟の部分はあまり聞いていなかったように思います。もちろん、多様性が大事だということはしっかり伝わっていたと思います。スタッフのあいだでもそれは共有されていた。けれど、それがまさか「にじフェス」自体のコンセプトだとは思っていなかった。今日の話を聞いて、にじフェスに対する見方が深まった気がします。
――現在は、代が変わって永田さんが代表になったと聞きます。来年の「にじフェス」に向けて、お二人のご意見をうかがえますか?
山口 今年の反省点は、準備の時間が足りなかったことです。結果的に広報・宣伝が遅れてしまいました。にじフェスの開催を広く伝えられなかった。来年も開催するのであれば、ぜひ早めに準備してほしいと思います。
永田 じつは、つい先日も学生会のメンバーで「来年もにじフェスは実施したい」という話をしました。ただ、それ以外の点については何も話せていません。10月に開催の「$2祭」が終わったら、すぐに「にじフェス」の準備に取りかかる必要があります。
山口 今年は学生会でスタッフを集めましたね。でも、学生会のメンバーだけでは十分に準備ができなかった。来年は、学生会のメンバー以外に限らず、広い範囲から実行委員になりたい人を募集するといいと思います。
永田 そのように考えています。そして、今日聞いたようなコンセプトも大事ですね。自分たちの代ならではのコンセプトを考えたいと思います。
――新しい代でも、今年のコンセプトを引き継いでいくことはできないでしょうか? コンセプトは同じでも、毎年、新しい部分にフォーカス(焦点)を当てると言ったような形がとれればよいと思うのですが。
山口 来年以降、たとえば「にじフェス」のパンフレットなどには「多様性」「~繋ぐ~」と書かなくてもいいと思う。あくまでも〝そういうビジョンがあったんだ〟というだけでいい。その年、その年にやることを、その年のテーマにしてほしい。
永田 今日、話を聞いて思ったことがあります。ひょっとすると、「多様性」のままだと互いに遠い存在のままになっちゃうんじゃないかな。〝肌の色が違うことを知っているだけ〟みたいに。今の世の中は普通に「多様性を認める」と言うけど、それだけだとお互いのことが分からないままになる。だからやっぱり、多様性を「考える」、そして「楽しめる」機会は大切なんじゃないかなと思います。
山口 そうした理念が引き継がれれば、十分だと思う。それが毎年の「にじフェス」に共通するコンセプト、理念になると思う。でも、その場合も、毎年毎年、独自のフォーカス(焦点)を考えていってほしい。
永田 そう思う。ぜひ「にじ」のコンセプトは継承したい。その一方で、自分たち独自のテーマみたいなものも作っていく。ほかのみんなにも僕から説明して、今日のようなことを一緒に考えていきたいと思います。
――素晴らしい着地点を見つけていただき、ありがとうございます! 今後につながるお話がたくさんありました。将来の「にじフェス」に活かしてもらえればうれしいです。この記事が読み継がれますように。お二人とも、ありがとうございました。
聞き手=吉田耕平(経済政策学科 教員)
(了)